「おめでとう」 川上弘美 著

まずは、川上センセイ芸術選奨文部科学大臣賞受賞おめでとうございます。

というわけで、「おめでとう」つながりで、「おめでとう」を紹介したい。

「おめでとう」には、十二編の物語が収録されているのだけれど、冒頭の「いまだ覚めず」は女性どうしの恋愛物語である。

主人公(女性)が、かつて恋愛関係にあった女性のことを、10年経ってみて、まだ好きだということに気がつき、10年ぶりに会いに行くというお話です。

この作品には、女性どうしの同性愛を描いた小説の動機(エクスキューズ?)によく登場する「女性どうしという設定を借りて、対等な恋愛関係を描きたかった」的な感じを受けません(私はですが)。

女性どうし、惹かれ合うのが当然という雰囲気が作品には漂っています。

川上さん自身は結婚もしてお子さんも二人いるのですが、女性どうしが恋愛する事に殊更特別な思いがなく、ありふれたことと感じているのではないだろうか?と作品を読んでいて思います。

私は、この「当たり前感」が読んでいて気持ちよいです。

主人公のヘタレな感じ(別れの往生際の悪さなど)は、自分にも思い当たる節があり、読んでいて胸が痛かったっす。

川上弘美さんは女性どうしの恋愛関係をよく書いている。だけれどあまり話題にはならない。
なんでだろう・・・

書き出しが抜群に魅力的なのと、現実から浮遊しまた戻ってくる感覚が心地よいので、川上弘美さんの作品をよく読むのだけれど、意図せずに購入した本の中に女性どうしの物語が収録されていたりすると、やっぱり嬉しいです。

おめでとう (新潮文庫)

おめでとう (新潮文庫)